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焼酎気ままコラム 2008年9月号
こんにちは、お変わりなくお過ごしでしょうか。

今回、世間を大変騒がせている「非食用事故米の不正流通事件」…。
あまりにも常軌を逸しており、言葉を失い気が遠くなります。

イモ焼酎の製造においては、原料としてカライモだけではうまくアルコール発酵させることが難しいために米麹の酵素力を利用するという方法が伝統的に行なわれてきました。
これは現代科学の観点からも非常に優れた方法であり、本県をはじめ南九州の酒造業が江戸期および明治期を通じて経験的知恵を積み重ねて獲得してきた技であり、世界に誇りうることでした。


米麹というのは、基材となる米に麹菌と呼ばれる有用カビを繁殖させたものです。
もっと単純に言えば「米麹とは米にカビが生えたもので、発酵に適しており有害でないもの」と言い換えることができます。そうです!皮肉にも今回話題になった一つに『カビが生えた米』がありアフラトキシンという毒素を出すものですが、それとこれとは似て非なるものなのです。

微生物学では、麹カビ属(アスペルギルス属)に分類される菌は実に多くのものがあります。
代表的なものでは、清酒などに使われるアスペルギルス・オリゼー(黄麹菌)、泡盛や焼酎用のアスペルギルス・ニガー(黒麹菌)、醤油などのアスペルギルス・ソヤーがありますが、これらによく似た菌としてアスペルギルス・フラバスも知られています。
このアスペルギルス・フラバスがつくるトキシン(毒素)がアフラトキシンであり、強烈な発ガン性を持ちます。わが国の食品や輸入品の検査機関で最も厳しくチェックされるカビおよびカビ毒がこれなのです。(だったはず…それなのに)


かつて、形質的に似ているがゆえに「日本の麹カビはオリゼーなのかフラバスなのか」という国際的大論争があったり、欧米のアフラトキシン飼料事件をきっかけに全ての麹菌とフラバスが同種のものとして統一されるなど不名誉な分類をされたために、わが国の微生物学や醸造学の全力を傾注して研究が行なわれました。
その結果、アフラトキシンはフラバスがつくりオリゼーは全くつくらないことや(※1)、形態的に胞子の突起ほかに大きな違いのあることが証明され、わが国の麹カビは安全かつ有用なもので分類学上もフラバスとは別種であるとして国際的に認められて、その地位を不動のものにしました。現在でもこの研究は発展的に続いており、安全性の確認とともに数々の有意な知見が発表されています。


以上のように、米および麹菌とイモ焼酎造りの深い関係を考えてみれば、アスペルギルス・フラバスとアフラトキシンの存在や混入は絶対拒絶しておくべきものであって大前提であったわけです(※2)。
もちろん、許容濃度を超えた残留農薬についても同じです。

しかし、想定外のことが起こってしまいました。しかも非常に単純かつ不誠実な人為的操作によって。
気を付けておくべきは微生物ではなくて高等生物の人間であったとは。
まるで、水甕の底に穴が開いているような虚無感。怒りを通り越して無性に悲しくなります。
けれども、感情に浸りあれこれ責任の所在や原因についての論評をしていても事態は好転しません(※3)。
食品および酒類の業界の一端にある弊店として今なすべきは消費者の皆様の安全と安心の確保と透明性の高い正確な情報伝達であり、流通業者としてかねての販売業務と同じように回収還流業務にも自店の責任において努めるべきと思います。
また一方、この事件がきっかけでイモ焼酎をはじめとする焼酎全般や本県特産物あるいは鹿児島そのものに対するネガティブな傾向が増えないように啓蒙活動にも一層努力したいと思います。


先日、店頭はもとよりホームページやメールで弊店の対応について皆様へお知らせしたのは、こういう気持ちからでありました。
どうか事情ご賢察の上ご理解とご協力を重ねてお願い申し上げます。
また、風評被害等につきましても皆様の冷静かつ温かいお気持ちで対応していただきたく切にお願い申し上げます。

現在、県内外のさまざまな方面から回収についてのお問合せや事態についてのご心配事など寄せられて連日追われております。
しかし、皆様のご不安や世間の動揺それから詐欺的被害に遭った該当メーカーに働く人々が困惑し涙しながらも歯を食いしばり頑張っている姿を見聞きするにつけ、自分に出来ることを不退転の覚悟で粛々と行なわなければと意を決している次第です。


(※1) アフラトキシンをつくる菌は、アスペルギルス・フラバスのほかにアスペルギルス・パラシティカスがあります。

(※2) アフラトキシンには10種類以上ありますが、今回言われているのは代表的なアフラトキシンB1であるようです。
これは、C17H12O6 で分子量312、融点が268℃(分解)。熱に対して比較的安定 で、これに汚染された食品を煮る・茹でる・蒸す等の普通の熱処理をしても残存することが判っています。
したがって、蒸留酒である焼酎の場合は、この物質に汚染された醪(モロミ)を蒸留してもほとんど醪に残存したままで原酒には移らないということは言えると考えます。

(※3) 今回の事件では、このほかにも「どうして焼酎に外国産米(ミニマムアクセス米)が使われるものがあるのか」など事情説明したい点がいくつもありますが、ここでは記述しきれません。
過去にイベントやセミナーなどで度々触れてきたことでもありますので、またいずれお話できればと思います。
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